クラウド導入費用
ERPNextをクラウドに導入する費用を解説。ConoHa VPSを利用し、月2000円台からの運用実例を紹介します。
ERPNextのクラウド導入費用|
月額2000円~ ConoHa VPSの実例
1. はじめに
この記事では、ERPNextをクラウドへ導入する手順と、その結果の実例をお伝えします。
私が導入に使った環境は以下の通りです。
- クラウド環境: ConoHa VPS
- サーバースペック:4コア / 4GB RAM / SSD 100GB
- 月額費用:1,813円(3か月契約)
- 利用バージョン:ERPNext: v15.75.1 (version-15) / Frappe Framework: v15.77.0 (version-15)
この構成で操作スピードも快適で、十分な性能を確保できます。
特に、ターミナルを通じて直接メンテナンスできる点は、技術者にとって大きなメリットです。
ConoHa VPSは価格が手頃で、日本リージョンから安定したレスポンスが得られるのも魅力です。
初めてERPNextをクラウドに導入する方にもおすすめできる構成なので、ぜひ挑戦してみてください。
ERPNextのクラウド環境(AWS / さくら / ConoHa / Frappe Cloud 比較)
ERPNextをクラウドで導入する場合、候補となるサービスはいくつかあります。
ここでは代表的な4つ、1.AWS(Amazon Web Services)、2.さくらインターネット、3.ConoHa VPS、4.Frappe Cloud を比較してみます。
選定基準
- 費用:月額コストを抑えられるか
- 性能(スペック):ERPNextが快適に動くか
- Frappe公式の推奨スペックでは、最低2GB RAM、推奨4GB RAM以上 が必要とされています
- 小規模検証なら2GBでも動きますが、本番運用では4GB RAMクラスを選ぶのが安全です
- メンテナンス性:ターミナル操作やスナップショットが扱いやすいか
- リージョン:日本国内にサーバー拠点があるか
各サービスの特徴
🌊 1.AWS(Amazon Web Services)
- 世界的に利用されているクラウド基盤
- スケーラビリティ・安定性は抜群
- ただし、小規模構成でも月額1万円以上になることが多く、費用面では割高 です。
- 導入・管理の自由度は高いが、構築に慣れていないと設定が煩雑 なので、おすすめできません。
🌸 2.さくらのVPS(さくらインターネット)
- 日本国内(東京・大阪・石狩)にサーバー拠点があり、低レイテンシで国内向けに強みあり
- 2025年最新プランでは:
- 2GB RAM/2コア/100GB SSD → 月額約7,500円〜
- 4GB RAM/4コア/100GB SSD → 月額約10,450円〜
- Webパネルから再起動やスナップショット操作が可能

🌳 3.ConoHa VPS 【おすすめ】
- GMOグループが提供するVPSサービス
- 日本リージョン提供でレスポンス良好
- 月額2,000円前後で4コア/4GB 200GB SSD構成が利用可能(圧倒的に安い!)
- 長期契約にすれば、さらに割引を受けられる
- 管理画面からスナップショットや再起動も簡単
- SSHターミナルでのメンテナンスもスムーズで、ERPNext運用に相性が良い

🦷 4.Frappe Cloud
- ERPNextを開発しているFrappe社が公式提供するクラウドサービス
- 導入やアップデートがGUIベースで非常に簡単 / 最速(専門知識が不要)
- SSHによるターミナル操作は提供されていないため、
bench updateなど細かな運用コマンドは実行できない - サーバーは海外リージョンにあるため、日本からのアクセスはやや遅延あり
- 月額費用はサイト数やリソースによって変動し、ConoHa VPSより割高になることが多い
カスタムアプリの構築にくせがあり、はまり所が多いです。
結果的には運用まで至らないことが多く、おすすめできません。!

🎲 まとめ表(Frappe推奨:4GB RAMクラスを基準)
| サービス | お勧め度 | 想定プラン | 月額費用 (目安) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 3.ConoHa VPS | ⭐⭐⭐ | 4GB RAM/4コア | 約2,000円前後 | コスト性能バランス◎・メンテ自由自在 |
| 4.Frappe Cloud | ⭐⭐ | 4GB相当リソース | ~30〜50 USD/月 | 公式・保守容易だがSSH不可・日本から遅延 |
| 2.さくらのVPS | ⭐ | 4GB RAM/4コア | 約10,450円 | 国内リージョン・安定・費用は割高 |
| 1.AWS | ⭐ | t3.medium相当 | ~10,000円以上 | スケーラブル・信頼性高いが高コスト |
【結論!】
既存のAWS環境があるなどの例外を除いて、
「自分で運用できる最安かつ快適」なのは ConoHa VPS がお勧めです。
実際の体感でも、ConoHa VPSはERPNextを快適に動かすのに十分な性能を発揮しております。
なお、すぐに試してみたいという方には、
- 日本語環境セットアップ済み
- 日本慣習へのカスタマイズ済み
の
MyHaTchのデモ環境をぜひご利用ください。
(アカウント発行は1分で完了!無料でお試しいただけます。)
※今回お勧めした、ConohaVPS上で動作しています。

ConoHa VPSでERPNextを運用した実際の使用感
3-1.アクセススピード(実測)
ConoHa VPS(東京リージョン)に立ち上げたERPNext環境へ、佐賀市からアクセスしてレスポンスを計測しました。
通信環境は自宅光回線ではなく、iPhoneのテザリングを利用。一般的な固定回線より遅い条件です。
【計測環境】
- ダウンロード速度:14.3 Mbps
- アップロード速度:23.5 Mbps
- レイテンシ:9 ms(サーバー:Tokyo)
この条件で実際にERPNextへアクセスした際の計測結果がこちらです。

- LCP (Largest Contentful Paint):2.38 秒
→ 主要コンテンツが3秒以内に表示され、業務利用として快適な水準 - CLS (Cumulative Layout Shift):0.15
→ ページ表示中のガタつきも少なく安定 - ネットワーク転送量:約3MB
→ ERPNextとしては標準的なサイズ
つまり「通信条件があまり良くない場合でも、業務利用に十分な速度が出る」ことが確認できました。
3-2.SSHターミナルから直接操作
ConoHa VPSでは、SSHでサーバーに入り、bench update や nginx reload といったFrappe/ERPNextの運用コマンドを自分の手で実行できます。
これ、ERPNext の立ち上げ/運用時には必須レベルです。
例えば、bench console 。
Python の対話環境として Frappe API を直接叩けるので、DBに直接SQLを書くよりも安全で便利です。
従業員マスタの一括変更
たとえば、従業員マスタ(Employee Doctype)で「使わないフィールドをまとめて非表示にしたい」場合、
以下のように数行で変更できます。
ターミナルにおいて
bench consoleでFrappe API を直接叩ける環境を立ち上げ、
AIで確認した下記コードを貼り付ける。
# bench console 上で実行
fields = [
"passport_number",
"health_insurance_no",
"driving_license_no",
]
for fieldname in fields:
df = frappe.get_doc("Custom Field", {"dt": "Employee", "fieldname": fieldname})
if df:
df.hidden = 1 # 非表示フラグを立てる
df.save()
print(f"{fieldname} -> hidden")これを実行すると、対象フィールドが一括で「非表示」設定になります。
GUIから数十クリックかかる作業も、数行のスクリプトで一気に処理できるのが bench console の大きな魅力です。
これは、運用・保守の自由度やスピード感という意味で必須レベルの利点です。
3-3.htop でのサーバー負荷状況(実測)
ConoHa VPS(4コア / 4GB RAM)上のERPNext稼働中に htop を確認した結果です。

- ロードアベレージ:
0.63 / 0.26 / 0.09
→ 4コアに対していずれも 1.0未満。CPUに十分な余裕あり。 - メモリ:
2.08G / 3.82G使用(約 55%)
→ 常時1.7GB前後の空きがあり、キャッシュ込みでも余裕。 - スワップ:
654M / 2.00G使用(約 33%)
→ 断続的に使われているが、スワップスパイクやスラッシングは見られず。 - 稼働時間(Uptime):
26 days, 18:17:14
→ 再起動なしで 約27日連続稼働、安定性良好。 - 主な常駐プロセス:
frappe worker(short/default queue)、redis-server、nginx、containerdなど
→ 平常時のCPU消費は 1〜2%台中心で推移。
結論
平常業務(フォーム閲覧・検索・ドキュメント作成)では、CPU・メモリともに明確な余力があり、スワップ利用も安定範囲です。
この規模(4C/4GB)で 小〜中規模運用には十分(同時利用ユーザ数:30人未満) と判断できます。
※ 高負荷テストの結果は別記事で公開予定です。 ※ 体感が落ちてきた場合、RAM 8GB へスケールアップするだけ(こちらも3,500円/月で可能)
4. セットアップ手順(概要)
次に、ERPNext を ConoHa VPS 上に導入するための基本的な流れを見ておきましょう。
-
VPS 作成
- ConoHa VPS に希望スペック(例:4コア/4GB RAM)でサーバーを立ち上げます。

- ConoHa VPS に希望スペック(例:4コア/4GB RAM)でサーバーを立ち上げます。
-
セキュリティ設定(ファイアウォール/セキュリティグループ)
- 初期設定では、SSH(IPv4・IPv6)が通り、さらに ERPNext の開発サーバー用ポート(例:TCP 8000)が必要であれば忘れず開放しておきます。

- 初期設定では、SSH(IPv4・IPv6)が通り、さらに ERPNext の開発サーバー用ポート(例:TCP 8000)が必要であれば忘れず開放しておきます。
-
SSH キーのセットアップ
- ローカルで鍵ペア(公開鍵・秘密鍵)を生成し、公開鍵を VPS に登録してパスワードなしのSSHログインを可能にします。

- ローカルで鍵ペア(公開鍵・秘密鍵)を生成し、公開鍵を VPS に登録してパスワードなしのSSHログインを可能にします。
-
ドメインの設定
- 独自ドメインを使う場合は、DNS設定でAレコードをVPSのIPに向け、必要に応じてSSL/TLSの取得(certbotなど)も行います。
-
ERPNext のインストール
ConoHa VPS上でUbuntuを利用する前提です。
ターミナルにログインして、以下を順に実行します。
# パッケージ更新
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
# 必要な依存関係をインストール
sudo apt install -y python3-dev python3-pip python3.11-venv \
redis-server mariadb-server xvfb libfontconfig wkhtmltopdf curl
# ユーザー作成(bench専用ユーザー)
sudo adduser frappe
sudo usermod -aG sudo frappe
su - frappe
# bench(Frappe CLI)をインストール
pip3 install frappe-bench
# bench init で新しい環境を作成
bench init --frappe-branch version-15 frappe-bench
cd frappe-bench
# 新しいサイトを作成(例: demo.maihatch.com)
bench new-site demo.maihatch.com
# ERPNextアプリを取得してインストール
bench get-app --branch version-15 erpnext
bench --site demo.maihatch.com install-app erpnext
# 開発サーバーを起動(確認用)
bench startブラウザで http://<VPSのIP>:8000 にアクセスし、ERPNextのログイン画面が表示されれば成功です。
本番運用では、bench setup production を使って nginx + supervisor 管理に切り替えます。
(詳細な構築手順は、別記事で公開予定です。)
5. まとめ
今回は、ERPNextをConoHa VPS上に導入するための手順をご紹介しました。
ERPNextなら、本格的なERPを 月2,000円から 使うことができます!
「費用を抑えて、本格的なERPを導入したい」という方にとって、おすすめの方法です。
多くの方がまだ知らないだけで、非常に魅力的な選択肢です。
ぜひご検討ください。
さらに詳しい負荷テストや運用ノウハウについては、別記事で公開予定です。
運用や導入でお困りのことがあれば、ぜひ MyHatch にご相談ください。