クラウド導入費用

ERPNextをクラウドに導入する費用を解説。ConoHa VPSを利用し、月2000円台からの運用実例を紹介します。

6分
最終更新: 2025年9月10日

ERPNextのクラウド導入費用|
月額2000円~ ConoHa VPSの実例

1. はじめに

この記事では、ERPNextをクラウドへ導入する手順と、その結果の実例をお伝えします。

私が導入に使った環境は以下の通りです。

  • サーバースペック:4コア / 4GB RAM / SSD 100GB
  • 月額費用:1,813円(3か月契約)
  • 利用バージョン:ERPNext: v15.75.1 (version-15) / Frappe Framework: v15.77.0 (version-15)

この構成で操作スピードも快適で、十分な性能を確保できます。
特に、ターミナルを通じて直接メンテナンスできる点は、技術者にとって大きなメリットです。

ConoHa VPSは価格が手頃で、日本リージョンから安定したレスポンスが得られるのも魅力です。
初めてERPNextをクラウドに導入する方にもおすすめできる構成なので、ぜひ挑戦してみてください。

ERPNextのクラウド環境(AWS / さくら / ConoHa / Frappe Cloud 比較)

ERPNextをクラウドで導入する場合、候補となるサービスはいくつかあります。
ここでは代表的な4つ、1.AWS(Amazon Web Services)2.さくらインターネット3.ConoHa VPS4.Frappe Cloud を比較してみます。

選定基準

  • 費用:月額コストを抑えられるか
  • 性能(スペック):ERPNextが快適に動くか
    • Frappe公式の推奨スペックでは、最低2GB RAM、推奨4GB RAM以上 が必要とされています
    • 小規模検証なら2GBでも動きますが、本番運用では4GB RAMクラスを選ぶのが安全です
  • メンテナンス性:ターミナル操作やスナップショットが扱いやすいか
  • リージョン:日本国内にサーバー拠点があるか

各サービスの特徴

🌊 1.AWS(Amazon Web Services)

  • 世界的に利用されているクラウド基盤
  • スケーラビリティ・安定性は抜群
  • ただし、小規模構成でも月額1万円以上になることが多く、費用面では割高 です。
  • 導入・管理の自由度は高いが、構築に慣れていないと設定が煩雑 なので、おすすめできません。

🌸 2.さくらのVPS(さくらインターネット)

  • 日本国内(東京・大阪・石狩)にサーバー拠点があり、低レイテンシで国内向けに強みあり
  • 2025年最新プランでは:
    • 2GB RAM/2コア/100GB SSD → 月額約7,500円〜
    • 4GB RAM/4コア/100GB SSD → 月額約10,450円〜
  • Webパネルから再起動やスナップショット操作が可能

さくらのVPSのスペック


🌳 3.ConoHa VPS 【おすすめ】

  • GMOグループが提供するVPSサービス
  • 日本リージョン提供でレスポンス良好
  • 月額2,000円前後で4コア/4GB 200GB SSD構成が利用可能(圧倒的に安い!)
  • 長期契約にすれば、さらに割引を受けられる
  • 管理画面からスナップショットや再起動も簡単
  • SSHターミナルでのメンテナンスもスムーズで、ERPNext運用に相性が良い

ConoHa VPSのスペック


🦷 4.Frappe Cloud

  • ERPNextを開発しているFrappe社が公式提供するクラウドサービス
  • 導入やアップデートがGUIベースで非常に簡単 / 最速(専門知識が不要)
  • SSHによるターミナル操作は提供されていないため、bench update など細かな運用コマンドは実行できない
  • サーバーは海外リージョンにあるため、日本からのアクセスはやや遅延あり
  • 月額費用はサイト数やリソースによって変動し、ConoHa VPSより割高になることが多い

カスタムアプリの構築にくせがあり、はまり所が多いです
結果的には運用まで至らないことが多く、おすすめできません。!

Frappe Cloudのスペック


🎲 まとめ表(Frappe推奨:4GB RAMクラスを基準)


サービスお勧め度想定プラン月額費用 (目安)主な特徴
3.ConoHa VPS⭐⭐⭐4GB RAM/4コア約2,000円前後コスト性能バランス◎・メンテ自由自在
4.Frappe Cloud⭐⭐4GB相当リソース~30〜50 USD/月公式・保守容易だがSSH不可・日本から遅延
2.さくらのVPS4GB RAM/4コア約10,450円国内リージョン・安定・費用は割高
1.AWSt3.medium相当~10,000円以上スケーラブル・信頼性高いが高コスト

【結論!】
既存のAWS環境があるなどの例外を除いて、
「自分で運用できる最安かつ快適」なのは ConoHa VPS がお勧めです。
実際の体感でも、ConoHa VPSはERPNextを快適に動かすのに十分な性能を発揮しております。

なお、すぐに試してみたいという方には、

  • 日本語環境セットアップ済み
  • 日本慣習へのカスタマイズ済み

MyHaTchのデモ環境をぜひご利用ください。
(アカウント発行は1分で完了!無料でお試しいただけます。)
※今回お勧めした、ConohaVPS上で動作しています。

ERPNextをConoHa VPSに導入したデモ画面
MyHaTchデモ環境の操作イメージ

ConoHa VPSでERPNextを運用した実際の使用感

3-1.アクセススピード(実測)

ConoHa VPS(東京リージョン)に立ち上げたERPNext環境へ、佐賀市からアクセスしてレスポンスを計測しました。
通信環境は自宅光回線ではなく、iPhoneのテザリングを利用。一般的な固定回線より遅い条件です。

【計測環境】

  • ダウンロード速度:14.3 Mbps
  • アップロード速度:23.5 Mbps
  • レイテンシ:9 ms(サーバー:Tokyo)

この条件で実際にERPNextへアクセスした際の計測結果がこちらです。

ConoHa VPSでのネットワーク計測結果

  • LCP (Largest Contentful Paint):2.38 秒
    → 主要コンテンツが3秒以内に表示され、業務利用として快適な水準
  • CLS (Cumulative Layout Shift):0.15
    → ページ表示中のガタつきも少なく安定
  • ネットワーク転送量:約3MB
    → ERPNextとしては標準的なサイズ

つまり「通信条件があまり良くない場合でも、業務利用に十分な速度が出る」ことが確認できました。


3-2.SSHターミナルから直接操作

ConoHa VPSでは、SSHでサーバーに入り、bench updatenginx reload といったFrappe/ERPNextの運用コマンドを自分の手で実行できます。
これ、ERPNext の立ち上げ/運用時には必須レベルです。
例えば、bench console
Python の対話環境として Frappe API を直接叩けるので、DBに直接SQLを書くよりも安全で便利です。

従業員マスタの一括変更

たとえば、従業員マスタ(Employee Doctype)で「使わないフィールドをまとめて非表示にしたい」場合、
以下のように数行で変更できます。

ターミナルにおいて

bench console

でFrappe API を直接叩ける環境を立ち上げ、
AIで確認した下記コードを貼り付ける。

# bench console 上で実行
fields = [
    "passport_number",
    "health_insurance_no",
    "driving_license_no",
]
 
for fieldname in fields:
    df = frappe.get_doc("Custom Field", {"dt": "Employee", "fieldname": fieldname})
    if df:
        df.hidden = 1   # 非表示フラグを立てる
        df.save()
        print(f"{fieldname} -> hidden")

これを実行すると、対象フィールドが一括で「非表示」設定になります。
GUIから数十クリックかかる作業も、数行のスクリプトで一気に処理できるのが bench console の大きな魅力です。

これは、運用・保守の自由度やスピード感という意味で必須レベルの利点です。


3-3.htop でのサーバー負荷状況(実測)

ConoHa VPS(4コア / 4GB RAM)上のERPNext稼働中に htop を確認した結果です。

htop 実測スクリーンショット

  • ロードアベレージ0.63 / 0.26 / 0.09
    → 4コアに対していずれも 1.0未満。CPUに十分な余裕あり。
  • メモリ2.08G / 3.82G 使用(約 55%
    → 常時1.7GB前後の空きがあり、キャッシュ込みでも余裕。
  • スワップ654M / 2.00G 使用(約 33%
    → 断続的に使われているが、スワップスパイクやスラッシングは見られず。
  • 稼働時間(Uptime)26 days, 18:17:14
    → 再起動なしで 約27日連続稼働、安定性良好。
  • 主な常駐プロセスfrappe worker(short/default queue)、redis-servernginxcontainerd など
    → 平常時のCPU消費は 1〜2%台中心で推移。

結論
平常業務(フォーム閲覧・検索・ドキュメント作成)では、CPU・メモリともに明確な余力があり、スワップ利用も安定範囲です。
この規模(4C/4GB)で 小〜中規模運用には十分(同時利用ユーザ数:30人未満) と判断できます。

※ 高負荷テストの結果は別記事で公開予定です。 ※ 体感が落ちてきた場合、RAM 8GB へスケールアップするだけ(こちらも3,500円/月で可能)


4. セットアップ手順(概要)

次に、ERPNext を ConoHa VPS 上に導入するための基本的な流れを見ておきましょう。

  1. VPS 作成

    • ConoHa VPS に希望スペック(例:4コア/4GB RAM)でサーバーを立ち上げます。 ConoHa VPS 作成
  2. セキュリティ設定(ファイアウォール/セキュリティグループ)

    • 初期設定では、SSH(IPv4・IPv6)が通り、さらに ERPNext の開発サーバー用ポート(例:TCP 8000)が必要であれば忘れず開放しておきます。 ConoHa VPS セキュリテグループ
  3. SSH キーのセットアップ

    • ローカルで鍵ペア(公開鍵・秘密鍵)を生成し、公開鍵を VPS に登録してパスワードなしのSSHログインを可能にします。 ConoHa VPS SSH キー
  4. ドメインの設定

    • 独自ドメインを使う場合は、DNS設定でAレコードをVPSのIPに向け、必要に応じてSSL/TLSの取得(certbotなど)も行います。
  5. ERPNext のインストール
    ConoHa VPS上でUbuntuを利用する前提です。
    ターミナルにログインして、以下を順に実行します。

# パッケージ更新
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
 
# 必要な依存関係をインストール
sudo apt install -y python3-dev python3-pip python3.11-venv \
    redis-server mariadb-server xvfb libfontconfig wkhtmltopdf curl
 
# ユーザー作成(bench専用ユーザー)
sudo adduser frappe
sudo usermod -aG sudo frappe
su - frappe
 
# bench(Frappe CLI)をインストール
pip3 install frappe-bench
 
# bench init で新しい環境を作成
bench init --frappe-branch version-15 frappe-bench
cd frappe-bench
 
# 新しいサイトを作成(例: demo.maihatch.com)
bench new-site demo.maihatch.com
 
# ERPNextアプリを取得してインストール
bench get-app --branch version-15 erpnext
bench --site demo.maihatch.com install-app erpnext
 
# 開発サーバーを起動(確認用)
bench start

ブラウザで http://<VPSのIP>:8000 にアクセスし、ERPNextのログイン画面が表示されれば成功です。
本番運用では、bench setup production を使って nginx + supervisor 管理に切り替えます。
(詳細な構築手順は、別記事で公開予定です。)


5. まとめ

今回は、ERPNextをConoHa VPS上に導入するための手順をご紹介しました。

ERPNextなら、本格的なERPを 月2,000円から 使うことができます!
「費用を抑えて、本格的なERPを導入したい」という方にとって、おすすめの方法です。

多くの方がまだ知らないだけで、非常に魅力的な選択肢です。
ぜひご検討ください。

さらに詳しい負荷テストや運用ノウハウについては、別記事で公開予定です。
運用や導入でお困りのことがあれば、ぜひ MyHatch にご相談ください。

まだ疑問が残りますか?

この記事で解決しない疑問は、無料相談でお気軽にご質問ください。ERPNext導入の専門家が直接お答えします。