負荷テスト結果
ERPNextをConoHa VPS(4core/4GB)に導入し、ApacheBenchとwrkで同時接続数ごとの応答性能を負荷テストしました。20人までは快適、30人を超えるとレスポンス低下とタイムアウトが発生します。

ERPNextの負荷テスト
— ConoHa VPS最小構成でどこまで耐えられる?
1. はじめに
ERPNextを導入検討する企業にとって、
「同時に何人まで利用できるのか?」「レスポンスはどのくらいで返ってくるのか?」
これは非常に気になるポイントです。
システムの処理能力を知っておくことで、必要なサーバスペックや将来の拡張方針を考えやすくなります。
今回は ConoHa VPS(4core/4GB) という最小構成に近い環境を使い、実際に 負荷テスト(ロードテスト) を行いました。
「小規模企業がERPNextを導入した場合、どのくらいの同時ユーザ数まで快適に使えるのか?」を確認するのが目的です。
2. テスト環境
テストは以下の環境で実施しました。
- サーバ: ConoHa VPS 4core / 4GB メモリ
- OS: Ubuntu 22.04 LTS
- アプリ: ERPNext v15 (Frappe Framework v15)
- クライアント: ローカルPC(WSL2 Ubuntu)から ab / wrk 実行
「クライアント」はテスト用のリクエストを送るPCのことです。
このPCから実際に大量のアクセスを発生させ、ERPNextが返す応答時間を測定しました。
3. テスト方法
2種類の負荷テストツールを使用しました。
-
ApacheBench (ab)
一定数のリクエストを同時に送信し、同時接続数ごとの平均応答時間を測定。 -
wrk
レイテンシ分布(どの程度の割合で何秒かかるか)や、タイムアウト発生数を確認。
対象はERPNextの トップページ(/)。
同時接続数は 10 / 20 / 30 / 40 / 50人 を想定してテストしました。
4. テスト結果

4-1. ApacheBench (ab)
ApacheBenchの結果は次のとおりです。
| 同時接続数 | Requests/sec | 平均応答時間 (ms) | 95% 応答時間 (ms) | 最大応答時間 (ms) |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 9.1 | 1101 | 1544 | 1963 |
| 20 | 12.8 | 1557 | 1960 | 2441 |
| 30 | 12.4 | 2429 | 3780 | 9566 |
| 40 | 13.9 | 2874 | 3527 | 5021 |
| 50 | 14.0 | 3562 | 3886 | 5001 |
👉 20人までは1.5秒前後で安定し快適。
👉 30人を超えると平均2秒以上に悪化し、長い場合は9秒近いレスポンス遅延も発生。
👉 50人同時では応答時間が3〜4秒台になり、業務システムとしては「遅い」と感じるレベルに。
4-2. wrk
wrkの計測では、タイムアウト発生数も含めて以下の結果になりました。
| 同時接続数 | 平均レイテンシ | 最大レイテンシ | Requests/sec | タイムアウト |
|---|---|---|---|---|
| 20 | 1.35秒 | 1.88秒 | 14.5 | 0 |
| 30 | 1.83秒 | 2.00秒 | 14.4 | 238件 |
| 50 | 1.37秒 | 1.74秒 | 14.3 | 413件 |
👉 Requests/sec は 約14件/秒で頭打ち。
👉 30人を超えるとタイムアウトが顕著に増加。
👉 50人では400件以上のタイムアウトが発生。
結論: ConoHa VPS(4core/4GB)環境でのERPNextは、
20人同時利用が快適の上限。
30人を超えるとレスポンス遅延とタイムアウトが発生する。
50人同時アクセスでもサーバ自体は落ちませんでした。
安定性は高い一方、スループットが限界に達していることが分かります。
6. まとめ
今回の負荷テストから分かったポイントは次の3つです。
- ConoHa VPS(4core/4GB)の環境では20人程度までが快適運用の目安
- 30人を超えると応答時間が2秒以上に悪化し、タイムアウトも発生
- サーバの安定性は高いが、処理性能は約14req/secで頭打ち
業務のピークや同時利用が多い環境を想定する場合は、次のような対応が必要です。
- サーバの CPU・メモリを増強
- ERPNextの ワーカー数・キャッシュ設定を調整
- 複数サーバ構成による スケールアウト
7. ConoHa VPSのスケールアップについて
今回のテストは「4core / 4GB」という最小構成で行いました。
そのため「20人が快適の目安」という結果になりましたが、ConoHa VPSは用途や規模に応じて 柔軟にスケールアップ できるのが特徴です。
- vCPUやメモリを上位プランに切り替え可能
- ディスクはそのまま利用でき、移行コストが小さい
- 管理画面から手軽に操作できる
👉 導入初期は「4core / 4GB」でコストを抑え、
👉 利用者が増えたら「8core / 8GB」やさらに上位へと拡張、
という流れが現実的でおすすめです。
まとめの一言
小規模利用ならConoHa VPS最小構成でも十分。
しかし、30人以上の同時利用を見込むならスケールアップは必須です。
ERPNextを安心して運用するには、サーバリソースの計画的な拡張が欠かせません。