Frappe社とは?
ERPNextを開発したFrappe社の会社概要、主力サービス、創業ストーリー、そして「ERPを民主化する」未来ビジョンを紹介します。オープンソースERPの背景を知りたい方必見。

ERPNextを生んだFrappe社とは?開発ストーリーと未来ビジョン
はじめに
オープンソースERPの代表格である ERPNext。
日本でも少しずつ耳にするようになりましたが、開発している Frappe社 についてはあまり知られていません。
「このソフトを作った会社はどんな企業なのだろう?」
「どういう思想でERPを作っているのだろう?」
本記事では、ERPNextの背景にある Frappe社の会社概要と文化 をご紹介します。
また、創業者がなぜオープンソースのERP開発を始めたのか、そのストーリーも触れながら、企業としての現在地と未来への展望をご紹介します。
Frappe社の概要
Frappe社(Frappe Technologies Pvt. Ltd.) は、
2008年にインド・ムンバイで設立されたソフトウェア企業です。
- 本社はインド・ムンバイにあり、世界中にリモートで働く開発者・デザイナー・サポートメンバーを擁しています。
- 社員数は数十名規模ながら、オープンソースコミュニティを含めれば、数千人規模で関わるグローバルなプロジェクトへと成長しています。
- 主な事業は以下の3つです:
- ERPNext:販売・購買・在庫・会計・製造などを一元管理できるオープンソースERP
- Frappe Cloud:ERPNextやFrappeアプリを手軽にホスティングできるクラウドサービス
- Frappe Framework:ローコードで業務アプリを開発できるWebアプリ基盤
Frappe社の根底にあるのは、
「オープンソース」「透明性」「自由」 を重視するカルチャーです。
コードはもちろん公開され、意思決定も可能な限り透明に行われています。
営利企業でありながらも、「倫理的に、透明に、持続可能に」 を掲げ、
ユーザー・開発者・パートナーが共に成長できるエコシステムづくりを目指しているのが特徴です。
主力サービス
Frappe社は、オープンソースのERPNextを中心に、クラウド提供や開発者向けの基盤まで幅広く展開しています。
中核となるプロダクトは以下の3つです。
(1)ERPNext
中小企業から大企業まで使えるオープンソースERP
👉 会計・販売・購買・在庫・製造・人事・CRMなど、企業活動に必要な機能を標準で網羅しています。
- オールインワンで統合されており、業務の分断を解消
- SaaS型・オンプレミス型どちらでも利用可能
- コードが公開されているため、自由にカスタマイズや拡張ができる
(2) Frappe Cloud
手軽に始められるクラウド提供
👉 ERPNextやその他Frappeアプリをワンクリックでホスティングできるクラウドサービスです。
- サーバー管理不要で、即座に利用開始
- セキュリティパッチやアップデートも自動適用
- 無料トライアルから利用でき、スモールスタートに適している
技術的な運用負担を軽減し、ERPNextを「インストール不要」で試せる環境を提供します。
但し、最寄りリージョンがシンガポールのため、日本から利用すると遅延大きいのが玉に傷。
(3) Frappe Framework
開発者のための基盤
👉 ERPNextを支えるWebアプリケーション開発基盤です。
- PythonとJavaScriptベースで構築
- 「モデル駆動設計」によるローコード開発を実現
- 認証、権限、通知、レポート生成など業務アプリに必要な機能を標準搭載
開発者はERPNextだけでなく、独自の業務アプリや拡張機能をこの基盤上で構築できます。
このように、
Frappe社は単なるERPベンダーではなく、
「ERPNext(アプリ)」
「Frappe Cloud(運用)」
「Frappe Framework(基盤)」
という三位一体のサービスを通じて、
企業と開発者の双方を支えるエコシステムを形成しています。
会社の原点:開発ストーリー
Frappe社の物語は、創業者 Rushabh Mehta の原体験から始まります。
家業ERP導入の失敗と気づき
2000年初頭、大学卒業後、Rushabhは家業である家具製造業を手伝うことになりました。
しかし導入したERPは複雑で高価なうえ、工場とオフィスが同期できず、結局日々の業務は手作業に頼るしかない状況。
「これなら自分で作ったほうがよいのでは?」――この発想がERPNextの出発点でした。
「知らなかったから挑戦できた」ERP開発
当時、ERPをゼロから作ることがどれほど大変かを知っていたら挑戦しなかったかもしれません。
しかし、無謀さとも言えるチャレンジ精神が幸いし、少しずつERPの形をつくり上げていきました。
失敗と書き直しを繰り返しながらも、その試行錯誤こそが後の強みとなっていきます。
会社設立とERPNext誕生
2008年、正式に会社を設立。
製品名を ERPNext と掲げ、会計・販売・在庫管理をカバーするソフトとして世に出しました。
当初は小さな規模の試みでしたが、少しずつ利用者が増え、実用に耐えるERPへと育っていきます。
オープンソース転換の転機
2010年以降、ソースコードをGitHubに公開し、本格的にオープンソースプロジェクトとして歩み出しました。
世界中の開発者が改善や機能追加に参加できるようになり、ERPNextは“個人の挑戦”から“コミュニティで育つプロジェクト”へと成長を遂げます。
文化として根付いた「ERPを民主化する」情熱
Rushabhの原体験――「高価で閉じたERPに苦しんだ経験」――は、Frappe社の企業文化に結晶しました。
- 誰でも使えるオープンソースERPを提供すること
- 専門家や大企業だけでなく、中小企業や個人までも支えること
- コードも経営もできる限り透明にすること
こうした姿勢は、今もFrappe社のカルチャーの中心にあり、“ERPを民主化する” という情熱を燃やし続けています。
今と未来
🌎世界に広がる利用実績
現在、ERPNextは世界30,000社以上 で利用されています。
製造業や小売、サービス業から教育・医療機関まで、あらゆる業界で導入され、
「中小企業でも無理なく使えるERP」として着実に広がりを見せています。
🎯ビジョン:「誰もがERPを使える世界」へ
Frappe社が掲げる目標は明確です。
それは 「ERPのWordPressになること」。
つまり、専門的な知識がなくても誰もが導入・運用できるERPを実現し、
企業規模や地域を問わず世界中の組織に届けることです。
🤝コミュニティ中心の成長戦略
Frappe社は大規模な広告や営業ではなく、コミュニティの力 を重視してきました。
- オープンソースとしての透明性
- GitHubやフォーラムでの活発な議論
- 世界中のユーザーや開発者による改善と拡張
こうした“共に育てる”姿勢こそが、持続的な成長の源泉となっています。
💲プラットフォーム戦略とERPの民主化
ERPNextは単なるERPアプリではなく、Frappe Framework上で動くプラットフォーム として進化しています。
- 会計・在庫などの標準機能にとどまらず、
- 企業ごとに必要なアプリや拡張を自由に追加可能
- 開発者はローコードで新しい業務アプリを構築できる
こうして 「ERPを民主化する」 という創業時の情熱は、今もプラットフォーム戦略として受け継がれています。
Frappe社の挑戦はまだ道半ばです。
けれども、「誰もがERPを使える世界」 というビジョンは、確実に現実に近づきつつあります。
そして私たち MyHaTch も、そのコミュニティの一員として日本企業への導入支援やローカライズサービスを提供しています。
オープンソースERPの可能性を共に広げながら、次の時代の業務基盤を一緒に築いていきましょう。