月次原価計算

月次原価計算ワークベンチの全機能ガイド。FIFO転がし・自動検算・異常値検知・差額仕訳まで、中小製造業の月次決算を劇的に効率化する仕組みを解説します。

5分

概要

月次原価計算は、製造業の月次決算に必要な 実際原価 を算出するための包括的なシステムです。

従来、多くの中小製造業では月次原価の算出にスプレッドシートを使い、材料費の FIFO 転がしを手作業で行い、配賦計算に半日以上を費やし、最後に目視で検算するという負担の大きいプロセスを毎月繰り返していました。

本機能は、その一連の作業を ワンクリックで実行 し、自動検算 まで含めてシステムが完結させます。さらに、標準の在庫台帳や会計元帳を直接書き換えない 「シャドウWIP(裏帳簿)方式」 を採用しているため、何度でもシミュレーション・やり直しが可能 です。

画面URL: /app/costing-workbench

月次原価計算ワークベンチ — 期間を選択するとサマリーカードとナビゲーションリンクが展開されます


この機能が解決する3つの課題

課題1:現場の入力漏れで原価計算が止まる

製造現場では、各作業が「どの最終製品向けか」の紐付け情報が入力されないまま実績が登録されることがあります。

本システムの解決策:最終製品の自動推論(Final Item Resolver)

原価計算パイプラインの Step 2 で、各コンテナ(仕掛品の単位)の工程ツリーを自動的に遡り、最終製品コードを推論・補完します。現場の入力負担を増やすことなく、原価の「迷子」を防ぎます。

課題2:イレギュラーな月で配賦計算がエラーになる

「今月はメンテナンスで生産実績がゼロだったが、間接費だけ発生している」——こうしたケースで配賦計算がゼロ除算エラーとなり、月次決算が止まってしまうことがあります。

本システムの解決策:ゼロデノミネーター自動回避

配賦サービスは、生産実績がゼロの場合でもエラーにしません。代わりに 期末仕掛品(残っているWIP)に対して自動的に間接費を按分 します。期末WIPも存在しない場合は、未配賦として検算ログに記録し、担当者に判断を委ねます。

課題3:一発勝負の月次処理が怖い

「計算を回したら結果がおかしかったが、もう元に戻せない」——こうした恐怖が、月次決算の大きなストレスになっています。

本システムの解決策:非破壊のシャドウWIPアーキテクチャ

本機能は、ERPNext 標準の在庫台帳(Stock Ledger)や会計元帳(GL Entry)を 一切書き換えません。独立した「サブレジャー(裏帳簿)」上で計算を行うため、配賦ルールや実績データを修正して 何度でも再計算 できます。最終的に確定した差額のみを仕訳として転記する安全設計です。


コスト改善の種を見つける高度な分析機能

月次原価計算は「数字を出して終わり」ではありません。本システムには、原価の異常や改善ポイントを自動的に発見する仕組みが組み込まれています。

異常ロットの自動検知

FIFO 転がしフロー画面(/app/costing-fifo-flow)では、ロットごとの単価を平均単価と比較し、乖離率が 20% を超えるロットに自動で警告マーク(⚠)を表示 します。膨大なロットデータの中から、入力ミスや仕入単価の異常高騰を一瞬で特定できます。

FIFO転がし画面 — 製品ライン別アコーディオンとコストウォーターフォール

不良ロス(スクラップ)の金額把握

一般的なシステムでは不良品の原価をゼロとして処理しますが、本システムでは不良品(スクラップ)にも投入された材料費・加工費を 論理的に按分配賦 します。これにより、「今月の不良発生でいくらの金額的ロスが出たか」を正確に把握でき、品質改善施策の費用対効果を数値で評価できます。

材料費ドリルダウン追跡

「この半完成品の原価が高いが、どの原材料が原因か?」——こうした疑問に対して、消費された材料の投入量に応じた プロラタ(比例配分) で材料費を分解し、コスト高騰の要因をツリー状に追跡できます。

前月比(MoM)レビュー

差額レビュー画面(/app/costing-variance-review)では、当月と比較月の原価を DM/DL/OH の3要素別 に自動比較します。変動率のバッジ表示により、コスト変動の大きい工程・型番がひと目で分かります。

表示項目説明
当月単価 / 比較月単価工程×型番ごとの単価推移
単価差額絶対額での変動
変動率パーセンテージ表示(色分けバッジ)
DM / DL / OH 差額3要素別の変動内訳

差額レビュー画面 — 2026年2月 vs 2026年1月のMoM比較


3レイヤーの自動検算で検算作業をゼロに

原価計算パイプラインの最終ステップ(Step 8)で、以下の整合性チェックを システムが自動実行 します。スプレッドシートで人間が行っていた検算作業がゼロになります。

検算項目チェック内容
貸借一致投入原価 = 完成品原価 + 期末WIP原価
材料費整合FIFO 消費原価の合計 = DM 配賦原価の合計
数量整合投入数量 = 完成数量 + 仕掛数量 + スクラップ数量

検算結果は /app/costing-validation-summary で一覧表示され、エラーがあれば原因と対象エンティティが詳細画面(/app/costing-validation-detail)で確認できます。


画面ギャラリー

原価ワークベンチ

期間の選択・計算実行・進捗監視・結果サマリーの確認を行うメイン画面です。期間を選択すると、サマリーカード(工程×型番数・期末仕掛数量・期末仕掛金額・検算OK率)と各分析画面へのナビゲーションリンクが表示されます。

画面URL: /app/costing-workbench

原価ワークベンチ — 期間選択後の詳細パネル

FIFO転がしフロー

材料の FIFO 消費順序と単価推移を時系列に可視化します。製品ライン別のアコーディオンでグループ化され、異常ロット(⚠)が自動ハイライトされます。

画面URL: /app/costing-fifo-flow

FIFO転がしフロー

WIP集計(工程別仕掛品評価)

工程別・品目別に仕掛品原価(DM + DL + OH)を一覧表示します。期首・投入・産出・期末の数量と原価が確認できます。

画面URL: /app/costing-wip-summary

WIP集計

WIP要素別

DM(材料費)・DL(労務費)・OH(間接費)の3要素別に仕掛品原価の内訳を表示します。

画面URL: /app/costing-wip-element

WIP要素別

期首残高

前月から繰り越された期首仕掛品残高を確認・編集します。

画面URL: /app/costing-opening-wip

期首残高

配賦プレビュー

間接費(Overhead Pool)の配賦シミュレーション画面です。計算実行前に配賦結果を確認・調整できます。

画面URL: /app/costing-allocation-preview

配賦プレビュー

配賦結果

配賦計算後の結果を確認します。各工程・品目への配賦額と比率が一覧表示されます。

画面URL: /app/costing-allocation-result

検算サマリー

貸借一致・材料費整合・数量整合の自動検証結果が一覧表示されます。エラーがある場合は詳細画面にドリルダウンできます。

画面URL: /app/costing-validation-summary

検算サマリー

検算詳細

検算サマリーでエラーが検出された場合、個別の検算エラーの原因と対象エンティティをドリルダウンして確認できます。

画面URL: /app/costing-validation-detail

差額レビュー(前月比)

当月と比較月の原価を DM/DL/OH の3要素別に自動比較し、変動率バッジで異常変動をハイライトします。仕訳下書きの自動作成もこの画面から行えます。

画面URL: /app/costing-variance-review

差額レビュー


操作手順

1. 原価期間の作成

  1. /app/costing-workbench を開く
  2. Costing Period DocType から新規期間を作成
  3. 対象年月を指定(例: 2026年1月)
  4. 期間ドキュメントが Open ステータスで作成される

2. 期首残高の繰越

  1. ワークベンチで対象期間を選択
  2. 前月の計算済み期間が存在する場合、「期首残高繰越」ボタンをクリック
  3. 前月の期末仕掛品残高(FIFO Lot の残量 × 按分原価)が当月の期首残高として自動コピーされる

確認画面: /app/costing-opening-wip

表示項目説明
品目コード仕掛品品目
最終製品紐づく完成品
数量繰越数量
DM(材料費)期首時点の材料費
DL(労務費)期首時点の労務費
OH(間接費)期首時点の間接費

3. 配賦プレビュー(シミュレーション)

実際の計算を実行する前に、間接費の配賦結果をシミュレーションで確認できます。

  1. /app/costing-allocation-preview を開く
  2. Overhead Pool(固定費プール)の金額を確認・編集
  3. Allocation Driver(配賦ドライバー)の配賦基準値を確認
  4. 品目ごとの配賦額・比率をプレビュー
  5. 必要に応じて値を修正し「保存」で反映

4. パイプライン実行(ワンクリック)

  1. ワークベンチで 「計算開始」ボタン をクリック
  2. バックグラウンドジョブで 8 ステップのパイプラインが自動実行される
  3. 進捗バーとステップ別の処理件数がリアルタイムで更新される

計算中もブラウザで他の作業が可能です。計算完了時にはアラートで通知されます。

5. 結果確認と分析

計算完了後、ワークベンチにサマリーカード(工程×型番数・期末仕掛数量・期末仕掛金額・検算OK件数)が表示されます。各分析画面へのナビゲーションリンクから詳細を確認できます。

主な確認ポイント:

  • FIFO転がしフロー: 製品ライン別のアコーディオンで工程ごとのコスト推移を確認。⚠マークのあるロットを優先チェック
  • WIP集計: 工程別・品目別の仕掛品原価(DM + DL + OH)を一覧確認
  • 検算サマリー: エラーが 0 であることを確認
  • 差額レビュー: 前月との変動率が大きい項目を分析

6. 差額仕訳の作成

差額レビュー画面から 「仕訳下書き作成」ボタン をクリックすると、サブレジャーと標準元帳の差額を調整する仕訳伝票(Cost Adjustment Entry)が自動生成されます。

  1. 差額レビュー画面で仕訳下書きを作成
  2. Cost Adjustment Entry で差異勘定・コストセンターを設定
  3. 承認後、Journal Entry(仕訳伝票)として GL に転記

7. 期間のクローズ

原価計算が完了し、検算に問題がなければ:

  1. 「Close」ボタン をクリック
  2. Costing Period のステータスが Closed に変更
  3. クローズ後は原則変更不可(管理者のみ再オープン可能、Costing Period Reopen Log に記録)

8ステップ パイプライン詳細

Step処理名内容
0期首残高ロードOpening WIP Balance から FIFO Queue に投入
1WIPイベント抽出Container Commit + Link から当月のイベントを収集
2final_item_cd 補完各コンテナの最終製品品目を自動推論
3FIFO転がし原材料の消費順序を FIFO で追跡し、ロット別原価を計算
4DM(直接材料費)計算仕入単価(Purchase Receipt)に基づく材料費の算出
5DL(直接労務費)集計Job Card Time Log の作業時間 × Workstation 時間単価
6OH(間接費)配賦Overhead Pool / Allocation Driver に基づく按分配賦
7WIP集計工程別・品目別の仕掛品原価を集計
8検算貸借一致・材料費整合・数量整合の自動検証

豊富な CSV エクスポート

ワークベンチの 「CSV出力」ドロップダウン から、以下のデータを Excel 対応 CSV(UTF-8 BOM付き)で出力できます。

CSV種別内容
FIFO転がしロットロット別の原価明細(偏差率・異常フラグ付き) + 原価ウォーターフォール
工程別仕掛品評価工程×型番ごとの期首・投入・産出・期末の数量と原価
配賦結果間接費の配賦明細
原価差額明細サブレジャーと標準元帳の差額一覧
Commit明細Container Commit 単位の原価トレース
製品別原価集計最終製品ごとの原価サマリー
工程別労務費・時間工程ごとの作業時間と労務費
副資材消費明細副資材の消費量・金額
月次推移月別の原価トレンド

Tips

  • 再計算はいつでも可能: Calculated 状態の期間でも「再計算」ボタンで再実行できます。配賦ルールの修正や実績データの訂正後に何度でもやり直せます
  • バックグラウンド実行: 原価計算は queue="long" で非同期実行されるため、計算中も他の作業が可能です。3秒ごとのポーリングで進捗がリアルタイム更新されます
  • 期間再オープン: 誤りが見つかった場合は管理者が期間を再オープンして再計算できます(Costing Period Reopen Log に記録)
  • 計算バージョン管理: 再計算のたびに calculation_version がインクリメントされ、いつ・誰が計算したかが記録されます
  • エラー時の自動復旧: 計算中にエラーが発生した場合、ステータスは Failed となりエラー内容が保存されます。原因を修正後、「再計算」ボタンで再開できます

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操作方法でお困りの場合は、お気軽にお問い合わせください。ERPNext導入の専門家が直接サポートします。